はじめに
「ゼロから事業を立ち上げるには、何が必要なのか?」
そんな問いに、圧倒的なリアリティをもって答えてくれる一冊が、澤田秀雄氏の**『HIS 机二つ、電話一本からの冒険』**です。

HIS(エイチ・アイ・エス)は、今でこそ日本を代表する旅行会社のひとつですが、その始まりはまさにタイトル通り、**“机二つ、電話一本”**という小さなスタートでした。そこから巨大企業へと成長した背景には、単なる根性論ではなく、市場を見る目・顧客志向・組織づくり・逆境での意思決定といった、経営の本質が詰まっています。
本記事では、『HIS 机二つ、電話一本からの冒険』から学べる重要ポイントを整理しながら、
起業・経営・マーケティング・自己成長の視点でわかりやすく解説します。
これから起業したい人、事業を伸ばしたい人、あるいは今まさに壁にぶつかっている人にとって、非常に示唆の多い一冊です。
本書の結論|成功する起業家は「夢・顧客・挑戦・継続」を持っている
本書を通して一貫して伝わってくるのは、澤田氏が考える成功する起業家の条件です。
それは、次の5つに集約できます。
- ニーズを味方にすること
- 志とビジョンを持つこと
- 顧客志向を貫くこと
- グローバルな視点を持つこと
- 挑戦しながら継続すること
単に「がんばる」だけではありません。
市場を読み、顧客の本音を見抜き、未成熟な産業に先回りし、組織を育てながら、何度失敗しても前に進む。これこそが、HISの成長を支えた本質です。
1. 起業の原点は「現場を見る力」にある
本書で非常に印象的なのは、**「何事も自分で確かめなければ本当のことはわからない」**という姿勢です。
机上の空論ではなく、まず現場へ行く。
実際に見て、聞いて、感じる。すると、想像していたものとは違う“予想外の現実”が見えてきます。
これは、現代のビジネスにもそのまま通用します。
- 顧客アンケートだけで満足しない
- 実際に店舗・現場・SNSの反応を見る
- 競合製品を使ってみる
- 海外事例を自分の目で確認する
澤田氏は、**日本と海外の価格差(内外価格差)**やサービス格差に敏感でした。
「海外では当たり前なのに、日本ではまだ普及していない」
このギャップこそが、新しいビジネスチャンスになるのです。
特に起業初期は、完璧な計画よりも、現場に出て仮説を修正する力のほうが重要です。
本書は、まさにその原理を教えてくれます。
2. 成功の鍵は「既存市場への参入」ではなく「新市場の創造」
HISの成長戦略で特に学びが大きいのは、
**「大手がやらない分野を狙う」**という考え方です。
澤田氏は、既存の大手が強い市場で正面衝突するのではなく、
- 大手が扱わない分野
- 未成熟な産業
- まだ一般化していない需要
- これから伸びる市場
を狙いました。
つまり、レッドオーシャンに挑むのではなく、ブルーオーシャンをつくる発想です。
本書では、以下の考え方が繰り返し登場します。
- 既存カテゴリーに参入するのではなく、新たな市場を創造する
- 市場動向の“半歩先”を読む
- 一方に偏ったものはいずれ解消される
- 海外との格差から、日本で流行るものを先取りする
たとえば投資でも、すでに話題になり尽くした銘柄より、
「まだ市場が十分に評価していない領域」を見つけることが重要です。
ビジネスも同じで、みんなが気づいた後では遅い。
だからこそ、HISは大手が本気で動く前にポジションを取り、圧倒的な存在感を築けたのです。
3. 「安いから売れる」は誤解|顧客が買う“本当の動機”を考える
旅行業界というと、「価格勝負」のイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし本書では、意外にも**“安さだけではビジネスは成立しない”**ことが強調されています。
澤田氏はこうした本質を見抜いています。
- 安い料金だけを追いかける客層は全体の一部にすぎない
- 安いから売れるのではない
- 「なぜこの商品を買うのか」という動機を考えることが重要
これは、現代のマーケティングでも極めて重要です。
顧客は価格だけで買っているわけではありません。
- 安心したい
- 失敗したくない
- 時間を節約したい
- 人に自慢したい
- 気持ちよく選びたい
- 自分に合った提案をしてほしい
つまり、顧客の購買動機を理解することが、価格競争から抜け出す鍵です。
本書は、単なる「格安旅行会社の成功物語」ではなく、
むしろ顧客心理を深く捉えたマーケティングの教科書として読むことができます。
4. 口コミと熱狂的ファンが事業を伸ばす
HISの成長を支えたのは、広告費だけではありません。
むしろ重要だったのは、熱烈な支持者=ファンの存在です。
本書では、
- 社員は以前のお客さんだった
- 熱烈な支持者がお客さんであり、宣伝の協力者だった
- 口コミで広がるお客さんを最も大切にする
という点が印象的に描かれています。
これは現代で言えば、
- SNSで自然にシェアしてくれる人
- リピート購入してくれる人
- レビューを書いてくれる人
- 家族や友人に紹介してくれる人
の存在です。
広告で一時的に集客することはできます。
しかし、**長く強いブランドを作るのは“熱量の高い顧客”**です。
私のブログもPVだけを追うのではなく、
- 「この記事、保存したい」
- 「また読みたい」
- 「この人の発信は信頼できる」
と思ってくれる読者を増やしたいものです。
5. 失敗は避けるものではなく、次の勝ち筋をつくる材料
本書の中で非常に実践的なのが、失敗への向き合い方です。
澤田氏は、次のような姿勢を取っています。
- とにかく壁にぶつかってみる
- 失敗した企画の検証こそ重要
- 失敗から教訓を引き出し、次の企画に活かす
- 大ヒットを狙いすぎず、シングルヒットを積み重ねる
これは、起業家にとって非常に重要な考え方です。
一発逆転を狙う大ヒット企画は魅力的ですが、
本書はそれよりも、「小さく当て続ける」経営の強さを教えてくれます。
- 小さく試す
- 反応を見る
- 失敗を分析する
- 次に改善する
この繰り返しこそが、事業を強くします。
まさに、事業は“改善の積み上げ”で伸びるのです。
6. 組織は「人数に応じて変える」もの
起業初期は、経営者自身が何でもやります。
しかし、事業が成長すると、それでは限界がきます。
本書では、組織づくりについても具体的に解説してくれます。
- 30人を超えたらマネジメント意識を持つ
- 100人を超えたら経営者はマネジメントに徹する
- 100人を超えたら経理部門を強化する
- 組織は固定化せず、状況に応じて改革する
これは、多くの起業家が見落としがちな点です。
「創業者の勢い」で伸びるフェーズと、
「仕組み」で伸ばすフェーズは、まったく違います。
さらに重要なのが、異質な人材と組む勇気です。
- 全員がリーダータイプではダメ
- 多様性が必要
- 苦手な人こそ身近に必要
- 自分にない能力を持つ人と組む
経営者は、つい「自分と似た人」を集めがちです。
しかし、それでは組織が偏ります。
本書は、自分の弱点を補完してくれる人材こそ宝であることを教えてくれます。
7. 逆境で差がつく|「土砂降りの時こそチャンス」という発想
澤田氏の言葉の中でも、特に起業家らしいのがこれです。
「ビジネスは、雨が土砂降りの時がチャンス」
つまり、多くの人が怖がって動けない時こそ、
大きなチャンスが眠っているという考え方です。
- 不況で誰も投資しない時
- 業界が混乱している時
- 規制が強くて参入が難しい時
- みんなが悲観している時
こうした局面では、競争が弱まり、先行者利益が取りやすくなります。
もちろん、無謀に突っ込めという話ではありません。
本書でも、**「本体がダメージを受ける挑戦はしない」**という冷静さが強調されています。
つまり重要なのは、
- 守るべき本体を守る
- リスクを限定する
- その上で逆張りの一手を打つ
というバランスです。
これは、投資にも経営にも共通する一流の姿勢です。
8. 最後に学ぶべきは「才能より、やる気と精神力」
本書全体を貫く最大のメッセージは、
**「成功者と失敗者の差は、才能よりも精神面の強さにある」**という点です。
- 才能よりもやる気
- 努力を継続すること
- 苦しい時でもプラス発想
- 決して諦めない
- 夢を目標に変え、一歩ずつ進む
起業は、綺麗ごとだけでは進みません。
想定外のトラブル、資金の不安、孤独、プレッシャー。
そうした中で、自分を励まし続けられる人だけが前に進めます。
澤田氏は、夢・目標・冒険心を人生の核に置いています。
そして、運も大切だと認めつつ、運が悪い時には静観し、運が向いてきたら勝負するという、実に現実的な視点も持っています。
この“精神論と現実感覚のバランス”こそ、本書の魅力です。
まとめ|『HIS 机二つ、電話一本からの冒険』は、起業家の実践書である
『HIS 机二つ、電話一本からの冒険』は、ただの創業物語ではありません。
そこには、今でも通用する起業と経営の本質が詰まっています。

本書から学べる重要ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 現場に行き、自分の目で確かめる
- 大手がやらない未成熟市場を狙う
- 既存市場ではなく、新市場を創る
- 顧客の“買う動機”を深く理解する
- 口コミを生む熱狂的ファンを大切にする
- 失敗を検証し、小さな成功を積み上げる
- 組織は成長段階に応じて変える
- 異質な人材と組む勇気を持つ
- 逆境をチャンスと捉える
- 才能よりも、やる気・継続・精神力が重要
これから起業したい人、事業を成長させたい人、
あるいは自分の発信やブログを資産に変えていきたい人にとって、非常に示唆の多い一冊です。
「小さく始めても、視野は大きく持てる」
そのことを、HISの創業ストーリーは力強く証明してくれます。


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